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乙女ゲームのことやら色々よろずに日々思いついたことなどをつらつら書いております。ノーマルも勿論好きですが、腐ってるのも好きなので、苦手な人は注意。
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2024/11/23 (Sat)                  [PR]
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2007/06/05 (Tue)                  十六夜の月の日に 第14話
「弁慶さん、これとかどうですか?旅行鞄。結構入ると思いますよ」
「そうですね・・・ではこれにしましょう」
「楽しみですね、旅行」
「確か京都へ行くんですよね?」
「はい。あの世界で言う、京に行くんです」
「・・・まあ、僕としては、望美さんと2人きりの方が良かったかな」
「もう!弁慶さんったら!いいじゃないですか、九郎さんとも一緒なんですから」
「そうですね・・・きっと九郎も楽しみにしているでしょうし、何より将臣くんが・・・」
「将臣くんがどうかしましたか?」
「いいえ。何でもありませんよ。さて、そろそろ行きましょうか。きっと待たせてしまっているだろうから」
「そうですね」

 望美と弁慶は手を繋いで歩き出す。幸せそうに微笑み合って。


「遅いな、2人とも・・・」
「望美の買い物が長引いてるんだろ。女の買い物は長いからな」
「そういうものなのか・・・」

 九郎はうーんと唸っている。なかなか乙女心を理解出来ないでいるらしい。
 それでいいと将臣は思う。九郎は自分だけのものだと思っているからだ。

「でも・・・ここは本当に穏やかなところだな・・・」
「平和・・・だろ?」
「・・・ああ。人が傷付けあう必要がないからな・・・」

 今はもう戻れないあの世界を思う。
 誰にも別れは告げられなかったが、それでいいのだとも思う。会ったらきっと寂しくなる。だから良かったのだ、これで。

「なぁ・・・九郎」
「なんだ?」
「今、幸せか?」
「何を突然・・・」
「いいから答えろよ」

 確かに自分の思い描いた未来とは違うもので、悔やんでいることはたくさんある。それでも迷うことなく言える。

「幸せだ」

 将臣は満足したように微笑み、九郎の顔に顔を近づける。九郎も何のことだか分かったのか静かに目を閉じる。
 2人の距離はだんだん近付いていくはずだった・・・が。

「将臣くーん!九郎さーん!お待たせー!!」

 望美がある意味狙ってやっただろと言わんばかりのタイミングで戻ってきた。もしかしたら、元軍師の策略かもしれないが・・・。

「どうしたの?」

 望美は自分が邪魔をしたことに気付かない。弁慶はおかしそうに笑っている。

「ったく・・・お前って奴は・・・」

 将臣のこれからの敵は当面、鈍感幼馴染と腹黒元軍師だろう。

 それでもいいと思えるくらい、幸せだと笑っていられる自信はあるが・・・。

 やっと手に入れた、自分の対と一緒なら・・・。




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2007/06/04 (Mon)                  十六夜の月の日に 第13話
「将臣!降ろせ!!」
「何でだよ、今更戻れないぜ」
「いいから降ろすんだ!!」
「何がそんなに気に食わないんだよ?」
「巻き込みたくないと言っただろう?!お願いだから離してくれ!!」
「・・・九郎、俺はお前といられるだけでいいんだよ。お前を見捨てて生きるなんてありえねえ。お前となら追われる生活だって構わないからさ」
「将臣・・・」
「だから・・・ずっと一緒にいようぜ」
「・・・ああ!」

 その時、辺りがパアッと光りだした。

「な、何だ?!」
ー神子が望んでる・・・2人の幸せをー
「で、どういうことになるんだ?」
ー2人とも神子の世界に連れて行くよー
「「はあっ?!」」
ー仲がいいね。2人ともー

 将臣と九郎の姿を見た者はいない・・・。




「さて・・・宴を始めようぜ・・・」
「何故この場に残っているんだ?知盛殿・・・」
「くっ・・・もちろん戦をする為だが・・・?」
「何を考えておられるのか知らないが・・・負け戦になるやもしれないのにか?」
「平家にいる頃からそれくらい覚悟はしていた・・・それに御曹司がいつまでも気に病むとなると・・・兄上の気苦労も増えるだろうからな・・・」
「・・・好きになさるといい。俺は俺で好きにさせてもらう」

 奥州が負けることはなかった。泰衡は政子の中の神を御し、何より知盛一人で大半倒したらしい。
 それからというもの、知盛は平泉を気に入ってか、南の島には手紙をよこすだけで、戻らなかった・・・。




2007/06/03 (Sun)                  十六夜の月の日に 第12話
 もうすぐ戦が始まる。その前に九郎のもとへ辿りつかなくてはならない。将臣は馬に乗ろうとした。

「・・・お前一人で行くとは・・・つまらんな」
「知盛。お前は来る必要はない。これは俺の問題なんだから」
「このように楽しいことを・・・俺が黙って見ていると思うか?」
「知盛」
「楽しみは共に・・・味わおうぜ・・・兄上」
「・・・好きにしろよ・・・ったく」

 こうして将臣と知盛は九郎のもとへ急ぐ。
 途中、鎌倉側の武士にも会ったが、知盛がほとんど倒してしまった。

「知盛、お前、腕は鈍ってないみたいだな」
「くっ・・・当たり前だろう・・・?」

 やはり知盛は平家の最高の将だと将臣は思う。普段の生活に多少問題はあるが、頼りにはなる奴だ。

「もうそろそろ見えてくるはずなんだ・・・」

 もしかしたら、奥州の兵とも戦わなくてはならないかもしれない。簡単に通してくれるとは限らない。
 それでも行かなくてはならないのだ。自分の願いを叶える為には。

「見えてきたな・・・」

 奥州の軍は警戒こそしたが、襲っては来なかった。というのも、泰衡から命令があったのだ。通すようにと。幸い、知盛は元は殿上人で、特徴はよく知られている。身分の高い者に、だが。泰衡もまた、知っていたし、九郎から聞いたこともあった。だから、通してもらえたのだ。

「九郎!!」

 将臣が声をあげる。九郎が長い髪を揺らし、振り向いた。

「将臣?!」

 驚いた表情。当然だろう。いるはずがないのだから。
 将臣は馬から降りて、九郎のもとに走った。

「何故来た!俺は平家になど行かないと言っただろう!!」
「別にどこでもいいんだよ。お前が生きている場所ならどこでも。だから、来い。九郎」
「し、しかし・・・俺だけ逃げるのは嫌だ・・・弁慶だけを犠牲にして・・・のうのうと生きてなどいられない・・・」
「弁慶は生きてたんだよ!望美と一緒に俺たちの世界に行ってたんだ」
「え・・・」
「早くしろ、九郎!!戦が始まっちまうだろ!!」
「しかし、平泉はどうなる?俺のせいで戦が起こったというのに・・・」

 九郎には恩がある。罪悪感だって消せない。

「行くがいい、九郎。どこへなりとも・・・」
「泰衡・・・しかし・・・」
「お前がいない程度のことでこの平泉が負けるはずなどないだろう」
「泰衡・・・」

 泰衡が無理を言ってるのは誰が見ても分かることだ。勢いは鎌倉側にある。

「・・・早く連れて行け。還内府」

 泰衡が将臣に目配せする。将臣は九郎を無理矢理馬に乗せ、自分も同じ馬に乗り、馬を走らせた。

「・・・どこへでも行くがいい・・・お前が生きていられる場所へ・・・」

 泰衡はそう呟いた。





2007/06/02 (Sat)                  十六夜の月の日に 第11話
 奥州と鎌倉の前面戦争まで、おそらく残りわずかだろう。そんなことを思いながら、将臣は過ごしていた。
 ヒノエはもう船を出すらしい。こうしてこの地にいられるのも時間の問題だ。でも、どうしても踏ん切りがつかない。

(嫌っているなら、まだ諦めがついたのにな・・・)

 そんなことを思いながら、目を閉じた。

 満月の夜に・・・。


「将臣くん・・・」
「・・・望美」
「九郎さん・・・どうしてる?」
「・・・死ぬ気だよ、あいつ。誰も巻き込みたくないんだと・・・」
「・・・あのね、私、少し前まで時空移動が出来たんだよ」
「時空移動?」
「うん・・・最後に使ったのは、弁慶さんを助けに行ったの・・・もう一度会いたくて、呼んでいるような気がして・・・」
「・・・」
「それでね、弁慶さん、怪我しててね、助けなきゃと思ったの。そしたら、弁慶さんと一緒に現代に戻ってて・・・逆鱗が壊れてた。きっと力を使いすぎたんだと思う・・・」
「弁慶は生きているのか?」
「うん。今、少しずつ回復していってる」

 九郎にこのことを伝えなくてはと、将臣は思った。これはどうしても伝えなくちゃいけない。

「お願い、将臣くん。九郎さんを救って。弁慶さん、すごく心配してる・・・それだけが気がかりだって」
「・・・」
「私も後悔してるの。九郎さんも助けなきゃいけなかったのに・・・私が撒いた種でもあるのに・・・て」
「望美・・・」
「私はもうそっちに行けない。だから将臣くん、お願い・・・九郎さんを助けて・・・」

 将臣は思った。別に九郎に拒絶されたからってなんだ、無理矢理にでも連れていけばいいんだ。九郎を救うというのが、自分の願いなのだから、恨まれようと構わない。

「OK。その約束、必ず守るぜ」
「ありがとう・・・将臣くん・・・」

 九郎の命がかかっているのだ。躊躇うことなんてない。
 意地でも、守ってみせる・・・。



2007/06/01 (Fri)                  十六夜の月の日に 第10話
 将臣と会った日、九郎は覚悟を決めた。
 例え、この命が儚くなろうとも、これ以上、戦を拡大させないということ。その為なら、鎌倉とも戦うと決めたのだ。誰が何を言おうとこの答えを覆すことはない。

「本当にいいのか、九郎」
「ああ・・・平泉の軍と共に戦わせてくれ」
「・・・平和に生きるという選択肢もあるのだが?」
「元から平和というのを知らぬ身だ。戦に生きて、戦に散る。そう決めたのだ」

 九郎はこの決断に後悔などしていなかった。

「お前は昔からそうだな・・・自分の意志を変えようとはしない。・・・いいだろう、この平泉の為に存分に力を尽くすがいい」
「ああ」

 後悔などしていない。するはずがないのだ。

『九郎さん、私達の世界は戦なんか何も無くて、すごく平和なんですよ。確かにまだ争っているところもあるけど、私の住んでる国は平和で・・・戦で死ぬことも傷付くこともなくて・・・人を傷つけなくてもいいんですよ』

 望美がこんなことを言っていたのを思い出す。
 望美の言う平和というのがどういうものか、見てみたいと思ったことはたくさんあるし、今でもきっとそうだ。
 誰も傷付かず、傷付けず・・・それで済む場所というのはどういうものなのだろう、戦がない世とはどういうものなのだろう、そんなこことに思いを馳せてみたこともある。
 でも、それを選ばないと決めたのも自分で、後悔などはない。

(将臣・・・)

 あの時、寒い中待っていた将臣もまた、平和な世を知っているのだろう。一度でいいから、将臣と同じ目線でものを見れたら、どんなんに幸せだろうと、叶わない願いを願っている自分もいるけれど・・・。


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