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乙女ゲームのことやら色々よろずに日々思いついたことなどをつらつら書いております。ノーマルも勿論好きですが、腐ってるのも好きなので、苦手な人は注意。
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2024/11/23 (Sat)                  [PR]
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2007/06/01 (Fri)                  十六夜の月の日に 第9話
 将臣は平泉の近くまで来ていた。しかし、これ以上は近づけない。何故なら平家のものが平泉に入ったと知られると不都合だ。平家にとっても、平泉にとってもそうだろう。しかし、それでは将臣の目的は果たせない。だから、将臣は夜、内密に抜け出すことにした。

「知盛にぐらい言った方がいいかもしれねえけど・・・」

 どうせ滞在時間などほとんどないに等しい。別に問題はないだろう。
 そう思い、平泉の地に足を踏み入れた。


「えっと、九郎の邸は・・・っと」

 あらかじめヒノエに貰っていた地図を頼りに歩き続ける。
 しかし、着いたはいいが、九郎のいる様子がなかった。どうも留守にしているようだ。

(仕方ねえ。しばらく待つか・・・)

 寒い中、将臣は待っていた。今まで南国の方にいたせいか、やけに寒く感じる。しかし、将臣は待っていた。九郎にどうしても会いたかったから。
 やっと九郎らしき人物が帰って来るのが見えた頃、将臣はすっかり冷え切っていた。

「やっと帰ってきたか・・・」

 九郎が将臣に気付くと馬から降りて、こう言った。

「ど、どうしてお前がここに・・・」
「よう・・・どうしてって会いたかったからに決まってんだろ」
「ふ、ふざけるな!!平家のお前が俺に何の用だ!!」

 九郎は平家のを強調して言った。やはり簡単に固定観念は消えないものである。

「お前が無事かを確認しに来たんだよ、今日はな」
「今日は?」
「九郎・・・俺と一緒に平家に来ないか?」
「ば、馬鹿なことを言うな!!そんなの無理に決まっているだろう!!」
「説得なら俺がする。だからお前は何も考えず、ついてきたらいいんだよ」
「そういうわけには・・・!」
「九郎・・・俺はお前が好きだ。だから、お前を放って、自分だけのんびり生きているなんてごめんなんだよ」
「しかし・・・」
「来いよ、九郎」
「・・・断る」

 九郎は顔を歪めて言った。つらそうに、何かを我慢しているように・・・。

「・・・平家を・・・お前をもう一度戦に巻き込むのは嫌だ・・・もう、誰にも傷付いてほしくないんだ・・・兄上は平家がまだ反乱の意志があるととれば、きっと平家を本当に滅ぼすだろう。だから・・・断る」
「九郎・・・」
「それに平泉にも恩を返さなくちゃならない。色々世話になったし、こんな俺を匿ってくれている。・・・逃げろと言った弁慶には悪いが、俺は俺一人、のうのうと生きているのは嫌なんだ」
「・・・」
「だから・・・さよならだ、将臣。もう2度と来ないでくれ」

 将臣はそれからどうやって帰ったのか、具体的には覚えていない。

「失恋より・・・ショックだな・・・」

 九郎を助けられる存在ではなかったということがとても悲しかった。

「・・・有川・・・」
「知盛・・・今日は早いんだな、起きるの」
「どこかの誰かさんが勝手に出て行ったからな・・・」

 心配されていたのか、と将臣は思ったが、あえて礼を口にはしなかった。知盛はそういうのを望んではいないだろうから。

「逢瀬に失敗したようだな・・・」

 そう、失敗したのだ。2度と戻せないのではないかと思うほどに・・・。



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2007/05/30 (Wed)                  十六夜の月の日に 第8話
「・・・」

 泰衡は内密に渡された手紙を読んでいた。
 差出人は還内府。九郎のことについて書かれていた。

 (九郎を助けるために、こちらに渡してほしい・・・か)

 この手紙の内容を簡単に信じられるほど、泰衡はお人好しではない。しかし、弁慶が言い残したことが気になる。

『還内府に事情を説明して下さい。きっと助けてくれます』

 あの弁慶が騙されたということはないだろう。しかし敵は敵だ。信用していいものかは疑うべきだ。

 (しかし・・・)

 鎌倉優勢のこの状態で九郎をここに残しても危ないだけではないだろうか。ここは賭けてみる方が得策か・・・。

 (・・・どちらも失うよりも・・・)

 泰衡は九郎のもとへ向かった。


「九郎」
「泰衡?何用だ?」
「・・・これを読め」

 泰衡はあの手紙を渡す。

「これは?」
「還内府からの書状だ」
「!!」

 九郎は食い入るようにそれを読んだ。表情もいつもと違う。

 (・・・なるほどな)

 泰衡は九郎と還内府の繋がりをある程度見定めた。

「九郎」
「・・・なんだ」
「還内府のもとへ行くがいい」
「?!」
「このままここにいてもどうしようもなかろう。お前が鎌倉と戦えるとも思えんしな」
「・・・俺に平家に寝返れというのか?」
「そうだ」

 その方が九郎の為だと泰衡は思う。しかし、九郎は首を縦に振らなかった。

「嫌だ。それだけは絶対にしない」
「・・・九郎」
「俺は源氏だ。平家になど行っても仕方ない」

 九郎の表情は重かった。まるで決断に迷っているように・・・。

「・・・まあいい。じっくり考えてみるといい」

 泰衡はそう言って部屋を出る。

「・・・俺が平家に行けば・・・今度は平家が狙われる・・・将臣に迷惑をかけていいはずがない・・・」

 その言葉は小さかったけれど、泰衡の耳に確かに届いた。


2007/05/29 (Tue)                  十六夜の月の日に 第7話
 奥州への旅はつらかった。というより、しんどい。鎌倉側の警戒もあり、奥州へ入りづらかったところ、偶然にもヒノエと会った。あちらもお忍びのようだったので、乗せてもらうことにした。半ば無理やりではあるが・・・。

「そういや、あんた達は聞いた?弁慶が死んだっていう噂」

 それを聞いた時、真っ先に思い浮かんだのは九郎のことだった。大切な友人を無くして傷付いているのではないか、もしくは九郎の身に何かあったのではないか・・・そんなことを思った。
 次に浮かんだのは望美のこと。あいつは弁慶を好いていた。こんなことを望んでいるはずがない。知ったらきっと悲しむ。
 そんなことを考えて寝たせいだろうか、夢に望美が出てきた。

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 どうして謝るのだろう。こいつが悪いことなんかしてるはずがないのに・・・。

「九郎さん・・・ごめんなさい・・・助けてあげられなくて・・・」

 どうして九郎が出てくるのだろう。俺の夢だからだろうか?俺がそう思ってるから・・・だからなのか?

「あの人の願いも・・・叶えてあげられない・・・」

 あの人とは弁慶のことだろうか。
 分からないが、昔から望美が泣くと、どうしてだか泣いてほしくないと思う。恋愛感情とかそういうのじゃなくて、でも大切だからだ。

「望美!!」
「・・・将臣くん?」
「九郎ことは俺がどうにかするから、だから、泣くな!!」

 遠くにいるから聞こえないかもしれない。俺も望美がどういう表情をしたかなんて詳しくは見えない。でも、わずかに微笑んだ気がした。

「・・・夢だよな」

 外に出るとここは船の上で、どこまでも青が続いていた。

「そういえば・・・昨日は満月だったな・・・」

 望美に会えたのはそのせいかもしれない。ろくな会話は出来なかったけど。
 でも約束をしたんだ。九郎のことは俺がどうにかするって。
 約束はちゃんと守るから・・・だから、望美、安心しろ。
 迷惑ではない。むしろ、九郎を守りたいという気持ちは真実なのだから、口実が出来たことに喜んでる自分がいる。

 必ず守るから・・・。


2007/05/27 (Sun)                  十六夜の月の日に 第7話
 望美の夢を見てから、また1ヶ月が過ぎようとしていた。
 噂で聞く限り、九郎の置かれている状況はあまりよくないらしい。

「・・・気になるのなら、会いにいけばいいだろう?有川」
「無理に決まってるだろう?平家の者が見つかったら、洒落にならない」
「こちらが思っているよりも・・・顔はわれていないと思うがな・・・」
「だいたい会って何になる?九郎をここに連れてくるなんて、それこそ無茶な話だ」
「くっ・・・還内府殿には元の世界に帰るという選択肢はないようだ・・・」
「・・・」

 いつだったか、白龍が言っていた。望美が帰ってすぐぐらいだろうか、帰りたいと思った時に帰れると・・・。
 しかし、将臣は平家のことが気になって、未だに帰れずにいた。

「もう・・・十分じゃないか?」
「・・・でも・・・」
「不安なら・・・俺がついていってやるぜ、兄上」
「お前におもりされるようなら、終わりだろうよ」
「・・・これからは一門のことは一門でやるさ・・・」

 これはもしかしたら知盛のささやかな気遣いなのかもしれない。将臣があまりに気にしているから・・・。

「・・・様子ぐらいなら見に行ってもいいかもしれねえな・・・」

 気になるのだから仕方がない。自分だけ見つかるなら、それもそれで諦めがつくだろう。
 ただ、純粋に九郎に会いたい。

「それならば・・・俺も行こう。丁度退屈していたところだ」
「はぁっ?!駄目に決まってんだろ!!お前は平家の将なんだぞ!!」
「くっ・・・戦を好む俺が、このような場所で満足するわけないだろう?お前が何と言おうと、一緒に行くぜ・・・兄上」
「・・・ったく・・・」

 こうして将臣の奥州へ行くことになった。
 頼りになるのかならないのか分からない、年上の弟を連れて・・・。


2007/05/26 (Sat)                  十六夜の月の日に 第6話
「・・・弁慶が来ない・・・」

 いつまで経っても来ない弁慶に九郎は痺れを切らしていた。北に移動しろとはいったいどういうことなのだろう。
 悪い予感がした九郎は一旦引き返すことにした。

「・・・九郎か」
「泰衡!弁慶について何か知らないか?来ないんだ」
「・・・どうして戻ってきた?今までのことを考えれば、あの男のとる行動ぐらい分かるはずだろう」
「泰衡?」
「弁慶ならお前を逃がす為に、囮になった。今ならまだ遅くはない。逃げろ」
「!!」

 逃げるなど、九郎の選択肢にはなかったことだ。弁慶を犠牲にしたまで、逃げる意味なんてない。今まで共に過ごしてきたのだから・・・。

「そんなの・・・俺には出来ない・・・俺がもう一度兄上と話し合って・・・!」
「無駄だ。今までもそうだったのだ。無理に決まっている」
「しかし!」
「どうしてもというのなら、平家を頼るといい。つてがあるのだろう?」
「な・・・!」

 将臣を頼れというのか?
 裏切ったあいつを・・・?

「それは・・・出来ない」
「ではどうするつもりだ」
「・・・弁慶が戻ってくるのを待つ」
「帰っては来ないぞ」
「いや、絶対帰ってくるんだ!策があると言っていたんだから!!」

 帰ってこないことなんて自分でも分かっていた。
 それでも自分だけ逃げるようなことだけはしたくなかったのだ・・・。


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