2011/12/21 (Wed) 忍人誕

「忍人さんの好きな物を知りませんか？」

　千尋がそんな質問をしながら天鳥船を練り歩いていることは、不思議と忍人の耳にも届いていた。が、千尋が何故それを聞いて回っているのかについては忍人には見当もつかず、疑問は増えていくばかりだった。
　そして噂をすれば影というもので、忍人がそんなことを考えていると、丁度千尋と同門の兄弟子二人(しかも厄介な二人)がそれについての話している場を見てしまい、咄嗟に隠れる。普段ならば堂々と出ていくのだが、されたくない質問があり、それは間違いなくされるだろうことを忍人は予測がついていたので、隠れるのが良いと判断した。

「やっぱり忍人さんの好きな物が分からないよお……」

　珍しく間延びした話し方をしている千尋は、心底分からないと言った風だった。

「そもそも、忍人自体無趣味ですし、好きな食べ物もありませんからね」

　風早が慰めるようにそう口にしたが、まるで忍人が悪いような雰囲気がある。
　悪かったな、無趣味で。と忍人は内心悪態を吐いた。

「いっそ我が君自身を贈ってみてはいかがでしょうか？忍人も嘸や驚くことでしょうし、我が君の望むさぷらいずにとやらも叶いますよ」

　何を馬鹿なことを言っているんだ、柊。と隠れているのを忘れて言いそうになるのを忍人は咄嗟に堪える。

「柊、寒っ！私をプレゼント、なんて有り得ない、有り得ないよ！」

　そこまで必死に否定しなくても……と思うくらい千尋は全否定した。

「俺も反対です。千尋の貞操に何かあったらどうする気ですか」

　風早が忍人に対して全く信頼していないことが露呈した。

(俺は野生の動物か何かか……)

　そこまで見境なく手を出したりしない。しない筈。

「ですが、どうします？忍人の欲しい物だなんて、実用的な物しかないと思いますが……」

　柊の言う通りだった。忍人もふと欲しい物を思い浮かべてみたが、そういえば予備の武器が減っていたから足しておきたいだとか、青物を食事に増やしたいだとかそんなことばかりで、自分自身の欲しい物というのがないのだ。そういうことを考えたのも今が初めてかもしれない。
　勿論、贈り物を喜ばない程、忍人は冷酷ではないし、貰うことがあれば嬉しく思うだろう。
　しかし、そこから先がないのだ。求める未来はあるが、物欲があまりになかったことに忍人は改めて驚いていた。それで自分の主君を困らせているのだから情けない。

「……そろそろ出てきてもいいのではありませんか？忍人」
「！」
「えっ？！」

　千尋が驚いた声を上げたのと同時に忍人も驚いていた。戦場でほどと言わずとも気配を消していたというのに、兄弟子に気付かれていたことに忍人は苦虫を噛んだような顔をした。

「あ、あの、忍人さん、今の話聞いてました？」
「……ああ、すまなかったな。立ち聞きをしてしまって」
「い、いえ、それは、いいんですけど……」

　千尋は意を決した表情をして忍人に向き直る。

「忍人さん、欲しい物はありますか？」

　その言葉が聞きたくなかった。答えられないのを知っていたからだ。

「欲しい物など……そもそも、聞いてどうするんだ？」
「忍人さんの誕生日に贈り物を……」
「贈り物？」
「生まれた日をお祝いするんです。生まれてきてくれてありがとうって……」

　千尋からのその言葉を喜ばない者などいないだろう。忍人はそれだけで十分だと伝えようとしたが、千尋は更に言葉を続けた。

「言葉じゃなくて、ちゃんと残る物をあげたいんですっ」

　だから教えて下さい、と千尋が懇願するものだから、忍人も答えざるを得ない。だが、忍人には欲しい物はないわけで。
　ふと、忍人はあることを思い付いた。

「……君の、」
「……？」
「君の好きな物が欲しい」




「あのー……一応、私の好きな物を用意したんですけど、本当にこれでいいんですか？」
「ああ。ありがとう」

　風早が言ったように忍人は無趣味であるし、欲しい物もない。だが、平和な世になれば何か変わるかもしれないし、その時は千尋の好きな物を共有したいと思った。唯一無二の主君であり、何より大切な女性の好きな物を共有したいと――。






＜あとがき＞
　当社比で相当甘くなっております^ ^
　俺、これ思いついた時、「キタ！」って思ったんですけどね。けれど駄文は駄文でしかないですし、この先の展開が甘過ぎて放り投げました。甘いの書いてるとうわああああああああ！！！ってなります。なんか、甘いの書ける人尊敬します。文才以前に駄文でも甘いの書けないので。誰か助けて！

　と、とりあえず忍人さん誕生日おめでとう！！

2011/12/03 (Sat) 小松誕SSS

※捏造現代EDまたは現代パロのどちらでも好きな方でご想像下さい。


「小松さん……ごめんなさい」

　桜智は申し訳なさそうに帯刀の前に立つ。帯刀には桜智に謝られる理由がなく、何事かと眉を寄せる。

「何かあったの？」
「その……３日のことなんだけどね……」
「３日？１２月３日がどうしたの？」
「……仕事が入ってしまって…どうしてもずらせないらしくて……小松さんの生まれた日なのに」
「……あぁ、そうだったね」

　帯刀は言われて漸く自分の誕生日に気が付いた。勿論、自分の生まれた日付自体は覚えていたが、年を重ねればあまり生まれた日というものも有り難く感じない上に忘れがちになる。仕事上のスケジュールに追われ祝うことさえ少なくなるものだ。
　桜智に言われるまで、祝うということを忘れていた。

「そんなことを気にしていたの？別にいいよ、ちゃんと仕事してきなさい」
「けれど……」
「だいたい週のうち５日は平日で仕事に行くんだ。休日と誕生日が重なる方が珍しいと思うけど？」

　だからそんなことを一々気にする必要はない、という意味も込めて帯刀は言う。

「……気にするよ」
「え？」
「小松さんが生まれた、特別な日だから……」

　そう言って、悲しげに目を伏せる桜智に帯刀が心打たれない筈もなく、思わず顔が緩む。

「……君は馬鹿だね」
「…………？」
「土曜に仕事があるだけで、終日家を開けるわけではないんでしょう？それなら、一番始めに私に祝いの言葉を口にして。あと、仕事の帰りに美味しい酒を買ってきてくれたら、それで十分だから」
「っ……うん。必ず、そうするよ……」

　そう言って破顔するものだから、帯刀はそれだけで嬉しいのだと言うことを桜智は知らない。





終わり。

　これ前日にあげるネタじゃ(^q^)というツッコミは受け付けておりませんwww
　私の勝手なイメージなんですけど、小松さんって自分の誕生日に執着はなさそうだな、と。勿論、祝ってはもらうけど、別にそう特別視はしてないイメージです。ある意味、当然祝ってもらえると思っているけど、楽しみには待っていない感じ。でも他人の誕生日は別で、割とそういうイベントは好きな方だと思います。企画するのがw　なんかもてなされるのは当然過ぎて大して嬉しいとは思わないけど、もてなす方に回ればはりきりそうだなとかwww　もてなされるの当然って性格悪くね？って一瞬思ったんですけど、ご家老ならば仕方ないと思います。
　桜智も然りな気がしますが、桜智に企画力はそんなに期待はできない感じかもと思います。あれしてこれして・・・とかはない。ただし、相手が喜ぶと知れば徹底はしそうですが。相手が喜ぶことをしたい系男子、桜智。

　誕生日はどうしたかは、きっと他のサイトさんとかがやってくれるって私信じて(ry
　プレゼントセンスが私にないので、こんな感じで勘弁してくだしあorz

2011/10/31 (Mon) ハロウィン④-片付け-(桜帯)

※腐向けなので、苦手な人は注意です。勿論、読まなくても大丈夫な仕様になっています。

2011/10/31 (Mon) ハロウィン③-Trick or Treat!-

「トリックオアトリート！」
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ……だったね。ふふ、よく似合ってるじゃない。三人共」
「ありがとうございます。都に手伝ってもらったかいがあったね」
「やっぱり良かっただろ？衣装の交換」

帯刀は面白いものを見るような目で三人を見た。
ゆきはチナミの服を、チナミは総司の服を、そして総司は普段の私服としているであろう着物に晋作のマントを羽織っていた。
髪型も趣向を凝らしており、ゆきは普段のチナミと同様に一つに三つ編みで束ねていたし、チナミは普段の三つ編みを解き、一纏めにくくっていた。……いつもと違い、チナミはぐったりしていたのは、おそらく相当大変な目に会ったからだろう。

「都くんはしないの？仮装」
「私はいいよ。天使を着飾る方が楽しいし、今回は面白いものも見れた」
「……まあ、物珍しくはあるよね」

チナミが新撰組の格好をしているのだ。本来、思想的に相容れぬ者の格好を。最初はごねたチナミを言いくるめ、半ば強引に服を脱がし、着替えさせるのは都から見れば思いの外楽しいことだったようだ。

「それで、お菓子だったよね」

帯刀は用意していた菓子を出す。そしてそれは一見して分かる程、良い菓子だった。

「小松さん、こんな高い物、頂いていいんですか？」
「頂いてくれないと私が悪戯されてしまうんでしょう？ならば貰ってくれないと……それともゆきくんは私に悪戯したかった？」
「そ、そんなことありません！」
「おい、ゆきをからかうなよ！」
「……頂きますね」

総司は菓子に手を伸ばし、パクリと一つ食べる。菓子を頂かねばならないものだとハロウィンのことを聞いていた。間違った認識である。

「それにしても総司、何故高杉の上着なの？何なら高杉の服を全てひっぺがしてしまえば良かったじゃない」
「不穏なことを言うのは止してくれ、小松殿」

マントを剥がれた高杉は丁度菓子を用意してきたのか、部屋に入ってきた。

「冗談だよ。……で、どうして高杉の服なの？」
「分かりません。けれど、サトウさんがこれが良いと言っていたので」
「そもそも何故仮装をしなければならないんだ？」

チナミが根本的なことを聞いてきた。

「うーん……分からないけど、魔女や狼男、あと悪魔の仮装をしたりするものだとしか……」
「イベントごとの起源とか知らないことが多いのは確かだな。盛り上がれればいいって感じだったしな」

うーん、とゆきと都は首を傾げる。

「じゃあ高杉の服は魔女やら狼男やらの服装に近いってことなの？」
「近いっていうか……」

都は言葉を濁す。アーネストが暗に晋作を悪魔だと揶揄していることに都も何となく分かっていた。

「……黒いマントを着るものなんだよ」





　新撰組隊服なチナミたんと高杉のマントを羽織った総司とチナミたんコスのゆきちゃんは可愛いと思います。そしてここでも出ていないのにアーネストの影www　都も出せたので満足です。

2011/10/31 (Mon) ハロウィン②-準備-(龍瞬)

※腐向けなので、一旦下げます。読まなくても一つずつ完結しているので大丈夫だと思います。